獣医が解説!猫の新しい腎不全治療薬「ラプロス」がとても効果的!
高齢の猫にとって腎不全はなる確率は高いけれど、なってほしくない病気の一つです。
腎不全は症状のわからない期間が長く、症状が現れた時にはかなり進行していることが多いのでできるだけ早く見つけ、できるだけ早く対策をとることが大事です。
最近、新しいお薬が登場しましたので、ご紹介します。
腎不全の症状や原因、治療やキャットフード選びについて詳細はこちらのの記事で確認してください。
猫の腎臓病ってどんな症状?治せるの?飼い主にもできる初期症状チェックとキャットフード選び
新しいお薬、ラプロス
2017年4月に発売された「ラプロス®(以下®省略します)」。テレビでも取り上げられ、注目されています。
今までの腎不全の治療は、
- 食事療法
- 皮下点滴
- 内服薬(吸着炭・ACE阻害薬)
が中心で、腎臓に負担をかけないことや、現れる症状に対する対症療法が中心でした。
それに対し、ラプロスは腎臓機能低下を抑制することができる、今までにないタイプのお薬です。
ラプロスが今までのお薬と違う点は?
今までのお薬や治療方法は、「脱水するので輸液する」とか、「排泄できない老廃物を吸着して外に出すための吸着炭」といった、対症療法的なものが主流でした。
腎臓が悪くなる原因は、感染・腫瘍などいろいろ考えられていますが、原因はいまだわかっていません。
慢性腎不全になっている猫の腎臓を顕微鏡下で詳しく見ると腎臓を構成する組織の隙間がかたくなり(尿細管間質の線維化)、腎臓の毛細血管の数が顕著に減少しています。このようなことが原因になり、老廃物のろ過や必要な水分の再吸収ができなくなり症状が悪化していきます。
そこにラプロスを使うと、
- 血管内皮細胞の保護
- 血管を広げる作用
- 炎症を起こすサイトカイン産生を抑制
- 微小血栓の生成阻害
などの働きによって腎臓の機能低下を抑制してくれます。
つまり、腎臓がだんだん悪くなっていくことをできるだけ止める薬と解釈できます。
ラプロスを投与して実際はどのような変化があるの?
ラプロスの臨床試験データによると、血液検査と臨床症状で次のような変化があったと報告されています。
- 血液検査: クレアチニンとBUNの値が下がった
- 臨床症状: 食欲不振の改善、体重減少の抑制、活発になる、脱水の改善
など、おおむね良い結果が出ています。
ラプロスはどの腎不全ステージの猫が対象なの?
腎不全はその状態によりステージ分けされています。一般的にIRIS(アイリス)のステージ分けが使われます。
ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 | ステージ4 | |
クレアチニン | 1.6以下 | 1.6~2.8 | 2.9~5.0 | 5.0以上 |
タンパク尿 | - | ± | + |
ステージ2になると何らかの腎不全の症状が現れ、腎不全食を開始することを勧める状態です。ステージの数字が大きくなるにつれ症状は重くなります。
ラプロスは全てのステージで使えるわけではなく、ステージ2と3で使用します。
1日2回で食後に投与するようになります。
甲状腺機能に問題がある猫の場合は慎重に投与する必要がありますので、高齢の猫で甲状腺機能亢進症がある場合には、獣医師と十分相談の上使用するようにしましょう。
まとめ
新しい腎不全の治療薬「ラプロス」。錠剤ですが直径6mm程度と小さく猫に飲ませやすいサイズです。腎不全が診断された早い段階から飲ませていくことで、腎機能低下が抑制されますので、延命が期待できます。治療効果の個人差はもちろんあると思いますが、試してみたいお薬です。
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某大学農学部獣医学科卒業。病院勤務を経て、2000年代に動物病院を開業。飼い主と犬のかけがえのない日々の手助けをすることをモットーに、疾患の治療だけでなく、最適なドッグフードの選択のお手伝いも含めライフスパンのトータルケアを行う。